個人事業主としてフリーエンジニアをしている木下です。
先月(2017年5月)猛威を振るったWannaCrypt、テレビやネットのニュースでも連日取り上げられて見聞きした方も多いでしょう。WannaCryptに代表される、システムの脆弱性を突いて感染したシステムのデータを暗号化してしまうマルウェアは「ランサムウェア」と呼ばれています。
この記事はこんな人におすすめです
- WannaCryptがメディアで取り上げられているが、いま一つ自分のこととして実感できない方
- ランサムウェアという言葉とWannaCryptという単語の違いがよく分からない方
- 「ランサムウェア対策にはバックアップ」と言われているが、いま一つピンとこないシステム管理者の方
WannaCryptによってセキュリティ対策とバックアップが注目されています。
バックアップでも「世代管理」が重要
ランサムウェア対策にはバックアップが重要、これは良く言われていますが、バックアップを以前と同様のジョブで取得しているだけではランサムウェア対策のためのバックアップとしては不足しているかもしれません。
それはバックアップの取得タイミングが復元ポイントとなるためです。
サーバに毎日ログインして画面を確認する、という方はどれくらい居られるでしょうか?おそらくかなり少数派だと予想しています。
たいていは、エージェントプログラム経由の監視ツールでサーバの正常稼働を確認していたり、ログ内容などをメールで受け取ることでサーバが正常稼働していることを確認したり、といった「リモートでの監視」がほとんどではないかと思います。サーバに毎日ログインする用事はそれほどありません。
しかし、ある日用事があってサーバにログインしたところ、「ランサムウェアに感染したと思しきメッセージが表示された」、と考えると恐ろしいものです。いつから感染していたのかもはや分からないかもしれません。
サーバがランサムウェアに感染してしまった、というケースにおいてはできるだけ早く感染した事実を知れるようにしたいものです。というのは「暗号化された状態のバックアップを取得してしまうことでバックアップが意味のないデータになってしまう。」ことが考えられるからです
ランサムウェア感染に気づかずにバックアップジョブがスケジュール通りに動作してしまうと、ランサムウェアに感染した状態のバックアップデータが、正常データを上書きしてしまうことによってデータの復旧ができないことが予想されます。
ランサムウェアに感染したことを速やかに把握できるようにすることと、感染後に気づいた後に復旧可能なくらいの期間バックアップデータを用意しておくことが重要になってきます。
バックアップはデータの重要性によって一週間ごと、一日ごと、○時間おきといった頻度で自動的に収集するように設定されているのが一般的です。
取得した中で一番新しい(取ったばっかりの)バックアップデータが最新のデータとなりますが、それ以前に取得したデータは「世代」という単位で管理します。
一つ前のバックアップデータであれば「一世代前のバックアップ(データ)」、二つ前のバックアップデータであれば「二世代前のバックアップ(データ)」と呼び、別のデータとして取り扱います。
例えばのバックアップ事例
一日おきにデータバックアップを取得している環境であれば、昨日のバックアップが一世代前、一昨日のバックアップが二世代前、ということになります。
ここで、ランサムウェアに感染してから三日気づかなかった場合、二世代前のバックアップは「既にランサムウェアによって暗号化された状態のバックアップデータ」となり、残念ながらランサムウェアからの復旧に使えるバックアップは残っていないでしょう。
しかし、十世代前までバックアップを取得していれば三日前に暗号化されてしまったデータを四世代より以前のバックアップデータから救出することができるかもしれません。

しかし、取得されていたバックアップデータが古すぎても役に立たないデータとなってしまいます
データの更新頻度によって適切なタイミングでバックアップが取得できていることがバックアップには要求されます。
ランサムウェア云々は関係なく、「バックアップは極力更新直後の新しい状態のデータを取得することが望ましい」というバックアップの基本の話となります。
また、取得しているバックアップデータを何世代かに一回は別のメディアに書き出して、オフライン保管しておくことによって、「オンラインでリアルタイムに感染してしまい、データが損壊してしまう」ことから保護することもできます。
これまでのバックアップは「故障に備えて最新状態のバックアップがあればよい」あるいは「ユーザの操作ミスにより失われたデータの回復ができる、数日前くらいのバックアップ」というそれほど世代管理にはシビアではない環境が多かったと思います。
しかし、今回ご紹介したセキュリティ対策としてのバックアップでは「ランサムウェアの問題を速やかに発見できるか」に加えて、「ランサムウェアに変質させられたデータを復旧できるバックアップの実行」が必要になってきている点がポイントになります。